北嶋美雪編訳『ギリシア詩文抄』より

岩と波白ぐ海との子

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わらべらの心を誇りかにする

お前、海の法螺貝

                              アルカイオス

 

 

われを遮り とどむるは

 四囲にどよもす

  紫なす海の 潮騒の音

                               シモニデス

 

 

夕星よ

光をもたらす暁が

散らせしものを

そなたはみなつれ戻す

羊をかえし

山羊をかえし

母のもとに子をつれかえす

                                サッポオ

 

 

運悪く醜女の女房を娶った男

灯ともしどきにランプをつけりゃ

いましも無明の闇を見る

                                パラダス

 

 

ゼノニスは ひげ生え揃うた

文法教師がお抱えで

息子を よろしくお願いと

言われて こちらが それではと

夜ごと 練習おこたりなく

させる相手は だれあろう

名詞変化に 接続詞

破格 お次は 活用形

                              ルゥキリオス

 

 

女が数人、オリーヴの樹に縊れているのを見た時のこと、

「どの樹にもこんな実が成ればよいのになあ」

                          シノペのディオゲネス

 

 

人間にとって何よりもよいのは生まれて来ないこと、

またまばゆく輝く陽の光を目にしないこと。

だが生まれてしまったからには、できるだけすみやかにハデスの門をくぐり、

こんもり盛られた土の下に横たわること。

                               テオグニス