遠人愛

このところなんとなくギリシアづいている。きっかけはもちろんいま稽古中のお芝居。呉茂一の『ギリシア神話』を読み返してみたり。

直接の呼び水になったのはジョージ・スタイナーの『アンティゴネーの変貌』。ウィキペディアで「アンティゴネー」を調べてみたら書名が挙がっていたので、何かの参考になるかと思って読んでみたのだが、これはむしろアンティゴネーを一題材としたヨーロッパ文化論だった。

何らかの政治的・文化的な転換期や危機の時代を迎えるたびに、ヨーロッパの思想芸術が繰り返し「ギリシア的なもの」に回帰し続けてきた、ということが書いてある。ここでいうギリシア的なものとは、原型としての「ギリシア神話」。以降の全ヨーロッパ文化は、この時代に出来上がった、ごく限られた数の神話的類型の模倣・書き換えに過ぎず、その上に新しいものは何一つ付け加えていないと。こうしたことをうんざりするくらいの実例を挙げて論じている。

なるほど、古代ギリシア文化というのは、後代の人間がこぞってお手本にしたくなるくらい、そんなにも求心力の強い魅力的なものなのか。それに原型を知っておけば、後の時代のものを見たり読んだりする際のアンチョコになるのではないか。そう思い立って、分厚い神話の本をひっくり返してみたりしている。しかし、前に読んだはずの箇所の内容もほとんど覚えていないのには愕然とした。

たしか江戸川乱歩も一時期ギリシアにはまって、ローブ古典叢書を片っ端から読んだとか書いてたな。そんな真似は到底できない。というか、逃避してないで台本を読め。


昨日は稽古休みで、12月に客演する芝居の打ち合わせだった。憧れのあのお方との二人芝居(しかし人妻)。やほーい!